桃色のうさぎ

大丈夫な日の私だけをみつめてよ

ピアス開けたら人生変わった

昔からピアスを着けることに憧れを抱いていた。小学5年生の頃、マグネットピアスという磁石ではさむピアスが流行っていて、クリスマスプレゼントに買ってもらった。特に憧れるようになったのは高校生の頃からで、当時信仰していたアベフトシの影響はもちろん、NERVOUS VENUSという漫画の登場人物である櫻がつけている小さな紅いピアスがかっこよくて、めちゃくちゃ憧れていた。けれど病院で開けるお金なんてどこにも無いし、かといって自分で開ける勇気もない。諦めるしかなかった。

社会人になってからもピアスを開けたいという欲望は何度も訪れた。学生の頃と違い金銭面で余裕もできたので、開けようと思えば開けられたが、どうしても勇気がなかった。
わたしが小学生の頃、母親がピアスを開けたところ、膿んでしまって痛がっていた記憶が染みついていた。きっとわたしも遺伝的なもので膿んでしまうかもしれないと恐れていたのだけれど、よく思い出してみると、たしか1ヶ月は外してはいけないファーストピアスを「かわいくないから」という理由で外していた気がする。実際に母親に聞いてみると案の定その通りで、なおかつ一番ピアス開けに適していない6月に開けたという。今は11月だし、ファーストピアスを外さなければ大丈夫だと思い、わたしは美容皮膚科へ向かった。

美容皮膚科はきらきらしていて、恐らくピアス開けではない用事で来たのであろう女性たちはみんな細身でおしゃれだった。その中で緊張でぶるぶる震えるわたしはどう見ても、大学デビューするために来た芋っ子だった。「フェルトペンで開けたい場所に印をつけてください」と言われるも、開ける位置なんて一番オーソドックスなところでいいし、ペンで上手く左右対称に書けないし、大変だった。
痛みには弱いので麻酔をかけようかと考えていたけれど、案内された部屋で先生は無言でピアッサーを準備し、さっさと開けられてしまった。両耳開けるのにきっと30秒もかからなかった。とにかくクールな先生で、注射を打つときみたいな「痛いけど我慢してくださいね」とかそんな声がけも一切なく、本当に一瞬の出来事だった。心の準備もできないうちに開けられたけれど、むしろその方が緊張せずに済んだ。想像していた痛みには程遠く、「こんなもんか」と思った。開けた瞬間のパチッという音とじわじわ広がる痛みがむしろ快感にも思えて、ピアスが3個も5個も開いている同僚がよく話す「ストレス発散でまた増やした」という言葉の意味が少しわかった気がした。
開けてからのわたしはとにかくご機嫌だった。今までなかったピンクの石(ファーストピアスを選べることに驚いた)が、わたしの身体の一部となっている。生まれ変わったような気分だった。

ピアス開けに関して、以前彼氏からは「開けない方がいいよ」と言われたのだけれど、今回のわたしはヴィヴィアン・ウエストウッドのピアスをどうしても着けたいという決心から「ピアス開ける」と断言したところ、「開けなきゃよかったって絶対に後悔しないなら良いよ」と了承してくれた。けれどたぶん、内心嫌だったんだろうな……と思っている。それでもわたしの意見を尊重してくれたのだから、ありがたい話だ。ピアスが何個も開いている女の子に密かに憧れを抱いていたのだけれど、「2個つけるのは?」と聞いたところ、「それは絶対に嫌だ。1個にして。」と止められたので、やめておく。